住まいについて考えてみても、神棚と仏壇を両方備えた家は珍しくないし、さらにはそれらの他にいろいろな神仏が祭られている場合も少なくない。ぼくの両親の家でも、神棚と仏壇の他に厨房には竃の神である荒神様がいて、庭の隅には母方の祖母が生前に大切にしていたという粗末な石のお地蔵さんが鎮座している。しかもこの状態は今風にかなり簡略化されたもののようで、戦前の日本の住宅には、地域やその家の生業によっても異なるが、さらに多様な神仏が住みついていたと言う。
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たとえば井戸には水神、便所には便所神、厩には馬の守り神、夫婦寝室には納戸神などがいて、夷様や大黒様が夷棚、大黒棚と呼ばれる神棚とは別の安置所に祭られている場合も多かったのである。このように人々が複数の信仰対象の併存を寛容に受け入れるということは、逆の側から見れば神仏たち自身がお互いの存在に寛容だということにもなる。彼らはそれぞれの支配領域を認めあい、それを相互に侵犯しない。死者の霊を司るのはほとんどの場合仏の仕事であるから、他の神々は関わりを持たない。